
あーるペン教授、午後試験対策で『スーパータイプとサブタイプ』っていうテーマが出てきたんですけど、正直よくわからなくて…。

スーパータイプとサブタイプは、確かに設計に慣れていないと戸惑う部分だと思う。でも実は、テーブルをどう分けるかにはちゃんとした“意味”があるんだよ。

意味、ですか?

うん。ただ分けるんじゃなくて“なぜ分けるのか”や“どこで分けるべきか”に理由を持てることが、設計ではとても大切なんだ。この記事では、まず基本的な定義から始めて、身近な例、試験での出題例、さらに実践的な解き方まで紹介していくよ。

午後試験で出てきたら必ず解けるように、理解します!
- スーパータイプとサブタイプとは何か
- データベーススペシャリスト試験での見極め方と解き方
- 実務での活かされ方
第1章:スーパータイプとサブタイプの定義と日常の例
スーパータイプとサブタイプとは?
「スーパータイプ(supertype)」と「サブタイプ(subtype)」は、ある対象を性質に応じて分類し、構造的に整理するための概念です。
これは主に**ERモデル(エンティティ・リレーションシップ・モデル)**において登場し、テーブル設計に深く関わります。
簡単に言えば――
- スーパータイプ:共通の性質を持つ「親エンティティ」
- サブタイプ:スーパータイプをより細かく分けた「子エンティティ」
たとえば、「社員」というスーパータイプがあり、その下に「正社員」「契約社員」「アルバイト」といったサブタイプがある、というイメージです。
日常生活での例(排他的サブタイプと共存的サブタイプ)
スーパータイプとサブタイプの関係は、日常でもよく見かけます。
ここでは**「排他的」と「共存的」**という2つの視点で分類してみましょう。
排他的サブタイプの例
※「いずれか1つのサブタイプにしか属さない」
- 動物の分類
スーパータイプ:動物
サブタイプ:哺乳類、鳥類、爬虫類
👉 同時に「哺乳類」で「鳥類」という動物はいません。 - 顧客の分類
スーパータイプ:顧客
サブタイプ:個人顧客、法人顧客
👉 顧客はどちらか一方にしか属さないのが通常です。
共存的サブタイプの例
※「複数のサブタイプに同時に属することがある」
- 商品の分類
スーパータイプ:商品
サブタイプ:セール対象、在庫限り商品、新商品
👉 1つの商品が「セール対象」かつ「在庫限り」であることもあり得ます。 - ユーザーの利用状況
スーパータイプ:ユーザー
サブタイプ:モバイルユーザー、PCユーザー、タブレットユーザー
👉 同じ人が複数のデバイスを使うことはごく自然です。
💡 なぜ分けるのか?
スーパータイプとサブタイプに分ける目的は、大きく以下の2つです。
- 共通部分と個別部分を明確に分け、設計をシンプルに保つため
⇒ 冗長な設計を避け、保守性や拡張性を高める。 - 整合性のあるデータ設計を行うため
⇒ 論理的な制約(「ある顧客は必ず個人か法人のどちらかに属する」など)を設計に反映しやすくなる。
スーパータイプ/サブタイプはER図にも登場!
ER図(エンティティ・リレーションシップ図)では、スーパータイプとサブタイプの関係を**「三角形の分岐」**などで表します。
- 完全分解(完全分割):スーパータイプは必ずいずれかのサブタイプに属する(例:顧客は個人か法人のどちらかに必ず属する)。
- 排他的分解(排他分割):スーパータイプは複数のサブタイプをまたがない(例:同時に「個人顧客」と「法人顧客」にはなれない)。
これらは午後問題でよく問われるポイントです。図として登場することもあるため、記号と意味をセットで押さえておきましょう。
次章では、このスーパータイプ/サブタイプの考え方が、試験でどのように出題されているのかを見ていきます。
午後問の具体例とともに、どこに注目すればよいかを丁寧に解説していきます!
第2章: データベーススペシャリスト午後問を解くためのコツ
DBスペシャリスト試験の午後問題でスーパータイプとサブタイプを正しく識別し、適切に解答することは、合格への重要な鍵となります。ここでは、問題文からこの概念を見抜くための具体的な「コツ」を解説します。
2.1 典型的な「見抜きポイント」
問題文や業務要件の記述には、スーパータイプとサブタイプを適用すべきサインが隠されています。
- 「○○には、△△と××がある」という表現:
- 「会員には、法人会員と個人会員がある」といった表現は、
会員
がスーパータイプ、法人会員
と個人会員
がサブタイプである可能性が高いです。これは最も直接的なヒントの一つです。
- 「会員には、法人会員と個人会員がある」といった表現は、
- 「○○には、△△と××が含まれる」という表現:
- 「従業員には、正社員と契約社員が含まれる」といった表現も同様です。
従業員
がスーパータイプ、正社員
と契約社員
がサブタイプであることを示唆しています。
- 「従業員には、正社員と契約社員が含まれる」といった表現も同様です。
- 「○○区分」「○○フラグ」などの属性:
- 「会員区分」「顧客フラグ」といった、エンティティの種別を示す属性が存在する場合、そのエンティティをスーパータイプとして捉え、各区分値(例: 会員区分の
法人
、個人
)をサブタイプとして整理できることがあります。 - 「○○区分」は”排他的分解”、「○○フラグ」は”共存的分解”であることが多いです。
- 「会員区分」「顧客フラグ」といった、エンティティの種別を示す属性が存在する場合、そのエンティティをスーパータイプとして捉え、各区分値(例: 会員区分の
- 共通属性と個別属性の記述:
- 「すべてのエンティティに共通して管理する情報(例: ID、名称、登録日)」と、「特定のカテゴリにのみ存在する情報(例: 給与体系、取引先担当者)」が明確に分けられている場合、共通属性を持つエンティティがスーパータイプ、個別属性を持つエンティティがサブタイプ候補です。
2.2 スーパータイプ/サブタイプとSQL、正規化
スーパータイプ/サブタイプの適切な扱いは、単にER図を描くだけでなく、実際のデータベース設計やSQLクエリの効率性にも深く関わります。
- テーブル設計の選択:
- スーパータイプとサブタイプをどのようにテーブルに落とし込むか(1つのテーブルにすべてまとめるか、それぞれ別のテーブルにするか、など)は、データの特性、更新頻度、検索パターンによって最適な選択肢が異なります。これが不適切だと、冗長性が発生したり、クエリが複雑になったりします。
- SQLでの結合と条件:
- サブタイプが別のテーブルになっている場合、スーパータイプとサブタイプの情報を結合する際には
JOIN
句が不可欠です。また、特定のサブタイプにのみ適用される条件をWHERE
句で記述する際には、そのテーブル構造を考慮した効率的なクエリが求められます。
- サブタイプが別のテーブルになっている場合、スーパータイプとサブタイプの情報を結合する際には
- 正規化との関係:
- スーパータイプ/サブタイプは、第2正規形や第3正規形といった正規化のプロセスとも密接に関連します。共通の属性をスーパータイプに持たせることで冗長性を排除し、データの一貫性を保つことができます。これは、正規化の目的とも合致します。
スーパータイプとサブタイプを見抜き、適切に設計できる能力は、DBスペシャリストとして複雑なシステムを扱う上で必須のスキルです。問題文からこれらのヒントを読み解き、知識を具体的な解答に結びつける練習を重ねましょう。
第3章:データベーススペシャリスト午後試験での出題例
平成30年度 午後Ⅱ問Ⅱ
この問題はスーパータイプとサブタイプの理解が必要不可欠な問題となっています。
品目には、受注品目(得意先から受注する品目)、投入品目(製造に必要な品目)、製造品目(自社で製造する品目)、発注品目(仕入れ先に発注する品目)がある。※問題文一部抜粋
上記の表現から、品目がスーパータイプ、受注品目、投入品目、製造品目、発注品目がサブタイプであることが分かります。
「2.1典型的な「見抜きポイント」」で解説した、1のパターンです。
では、排他的か共存的かはどのように判断すれば良いのでしょうか。
「2.1典型的な「見抜きポイント」」の3を活用します。
関係スキーマの「品目」テーブルに注目すると・・
- 製造品目フラグ
- 発注品目フラグ
- 受注投入品目区分
受注品目と投入品目の関係が排他的、それ以外は共存的であると判断できます。

「受注投入品目区分」⇒「受注品目」か「投入品目」かの区分
「製造品目フラグ」⇒「製造品目」かそうでないか
「発注品目フラグ」⇒「発注品目」かそうでないか
と考えると、分かりやすいかも!
4. まとめ
今回の記事では、データベース設計における重要な概念「スーパータイプとサブタイプ」について、その定義から日常の具体例、そしてデータベーススペシャリスト試験での実践的な見抜き方と出題例までを解説してきました。
スーパータイプとサブタイプは、一見すると複雑な概念に思えるかもしれません。しかし、「共通する要素をまとめ、異なる要素を分ける」という考え方は、データモデリングにおいて非常に強力な武器になります。
スーパータイプ/サブタイプの「本質」と実務での活用
スーパータイプは、複数の異なるエンティティが共有する共通の性質や役割を抽象化したものです。そして、サブタイプは、その共通の基盤を持ちながらも、それぞれが固有の属性や関係性を持つ具体的な分類を表します。
このモデリング手法を適用することで、以下のようなメリットがあります。
- データの一貫性向上: 共通情報を一箇所で管理できるため、データの冗長性を排除し、整合性を保ちやすくなります。
- 設計の柔軟性: 新しい種類のサブタイプが追加された場合でも、既存のスーパータイプに大きな影響を与えることなく拡張が可能です。
- 理解の促進: 複雑な業務要件も、共通部分と個別部分に整理することで、データベース設計の意図が明確になり、関係者間の認識合わせがスムーズになります。
これは、データベーススペシャリスト試験で問われるだけでなく、実際のシステム開発の現場でも非常に重要な考え方です。例えば、ECサイトの「商品」エンティティを「書籍」「家電」「食品」といったサブタイプに分けたり、企業の「従業員」を「正社員」「契約社員」「パート」などに分類したりする際に、このスーパータイプ/サブタイプの概念が活かされます。
複雑な業務ルールを正確にデータベースに落とし込むためには、この「共通性」と「個別性」を見極める力が不可欠なのです。