BASE特性とは?ACIDとの関連から学ぶ重要性と活用シーン

IT

りょう
りょう

BASE特性って聞いたことはあるけど、正直ピンと来てないんです。
各用語の意味も、一度覚えてもすぐ忘れてしまって。。。

教授
教授

BASE特性が出てきた背景や意味を少しでも理解しておくと
記憶に残りやすいかもね!

りょう
りょう

試験でも頻出ですか?

教授
教授

頻出。という訳でもないけど、何回も間違えてしまうと悔しいよね。

BASE特性を学ぶ前に知っておきたいこと

「BASE特性」について理解するためには、まず「ACID特性」を理解することが非常に大切です。

BASE特性はACID特性が持つ課題を解決するために生まれた考え方だからです。

「ACID特性」って知ってますか?

「ACID特性」とは、データベースにおけるトランザクション(一連の処理)が満たすべき4つの重要な性質をまとめたものです。

主に金融システムや在庫管理システムなど、データの整合性と信頼性が最優先される場面で重要な考え方です。

それぞれの頭文字が持つ意味は以下の通りです。

  • Atomicity (原子性)
    トランザクションを構成するすべての処理は、完全に実行されるか、全く実行されないかのどちらかです。途中で失敗することはありません。たとえば、銀行の口座間で1万円を移動させる場合、送金元から1万円が引かれ、送金先に1万円が振り込まれる、この一連の作業がすべて成功するか、すべて失敗するかのどちらかです。途中で送金元からお金が引かれたのに、送金先には振り込まれない、といった中途半端な状態にはなりません。
  • Consistency (一貫性)
    トランザクションが完了したとき、データベースは常に整合性の取れた状態を保ちます。事前に定義されたルール(制約)を破ることはありません。
  • Isolation (独立性)
    複数のトランザクションが同時に実行されても、互いに干渉することなく、あたかも一つずつ順番に実行されたかのように見えます。たとえば、夫婦が同じ口座から同時にそれぞれ1000円ずつ引き出そうとしても、データベースはそれらの処理を順番に扱い、正しい残高を保証します。
  • Durability (永続性)
    トランザクションが一度完了(コミット)すると、その結果は永続的にデータベースに保存されます。たとえシステムの障害や停電が発生しても、データが失われることはありません。

これら4つの特性を厳格に満たすことで、システムは極めて高い信頼性を実現できます。

ACID特性だけではカバーできない課題

ACID特性はデータの信頼性を高める上で非常に優れています。

しかし反面、大きな課題を生み出す原因にもなります。

例えば「Isolation (独立性)」を保つためには、同時にアクセスする処理を一時的に「待たせる」必要があるからです。

例えるなら、ACID特性は「一車線しかない、非常に安全な橋」のようなものです。

一度に1台の車しか渡ることができないため、安全は保証されますが
交通量が増えると深刻な渋滞(処理の遅延)が発生してしまいます。

近年のWebサービスは、世界中のユーザーが同時にアクセスし、膨大なデータを扱うようになりました。

より多くのユーザーに、より快適なサービスを提供するために
データベースを複数のサーバーに分散させる「水平スケール」という手法が不可欠になりました。

しかし、この分散環境下でACID特性を完全に維持することは技術的に非常に難しく、またコストも膨大になります。

このような環境では、従来のデータベースのようにすべてのトランザクションを厳格にACID特性に準拠させようとすると、パフォーマンスが著しく低下してしまいます。

この「パフォーマンス」と「スケーラビリティ」という新たな課題を解決するために登場したのが、次に解説する「BASE特性」という考え方です。

データベースの救世主?「BASE特性」の3つの要素

「BASE特性」は、ACID特性が持つ「厳格な整合性」をあえて緩めることで
「可用性」と「スケーラビリティ」を優先する考え方です。

BASEは以下の3つの要素の頭文字から取られています。

Basically Available(基本的に利用可能)

これは、システムが常に利用可能な状態であることを意味します。

たとえ一部のサーバーで障害が発生したとしても
システム全体が停止することなく、サービスを提供し続けることができます。

ACID特性のデータベースが「一か所に集中している安全な金庫」だとすると
Basically Availableなシステムは「複数の場所に分散している倉庫」のようなものです。

一つの倉庫が閉まっていても、別の倉庫から必要なものをすぐに取り出すことができます。

Webサービスでは、ユーザーが「表示できない」「読み込みが遅い」といった状態を極力避けたいものです。

このBasically Availableな性質は、常にユーザーにサービスを提供し続ける上で非常に重要となります。

Soft state(ソフトステート)

これは、「データが時間とともに変化する可能性がある」ことを意味します。

厳密な整合性をすぐに保証するのではなく、一時的に不整合な状態が存在することを許容します。

例えば、オンラインストアで人気商品が売り切れたとします。システム全体にその情報が完全に反映されるまでには、わずかな時間差が生じる可能性があります。あるサーバーでは「在庫切れ」と表示されても、別のサーバーではまだ「在庫あり」と表示されている、といった状態が一時的に発生します。

この一時的な不整合を許容することで、システムはデータを更新する際に、他の処理を待たせることなく、素早く処理を進めることができます。

Eventually consistent(結果整合性)

これは、システムに一時的な不整合があったとしても、最終的にはすべてのデータが一致した状態になることを保証する性質です。

つまり、「最終的に整合性が取れていればよい」という考え方です。

Soft stateで発生した一時的な不整合も、時間とともに解消され、最終的にはすべてのデータが一致します。

ユーザーの「いいね!」やSNSのタイムライン表示など、リアルタイムでの厳密な整合性が必須ではない機能において、この特性は大きなメリットとなります。

BASE特性のまとめ
Basically Available
Soft state
Eventually consistent

一次的に不整合が発生することもあるが、最終的には整合性が取れ、
いつでも使用可能な状態にある。

なぜ今、BASE特性が重要なのか?その注意点と活用シーン

これまで見てきたように、BASE特性はACID特性とは異なるアプローチでデータベースの課題を解決するものです。では、なぜ現代のシステムにおいて、このBASE特性がこれほどまでに注目されるのでしょうか。

巨大データを扱う「NoSQL」の台頭

BASE特性が重要視されるようになった背景には、「NoSQL」というデータベースの台頭が大きく関係しています。

NoSQLは、従来のRDBMS(リレーショナルデータベース)とは異なり、柔軟なデータ構造と高いスケーラビリティを特徴としています。大量のデータを複数のサーバーに分散させて保存・処理することに長けており、ビッグデータ時代に最適なデータベースとして普及しました。

しかし、この分散処理を実現するためには、ACID特性のような厳格な整合性を維持することが困難になります。そこで、NoSQLはACID特性の代わりに、BASE特性を採用することで、パフォーマンスとスケーラビリティを確保しているのです。

BASE特性の注意点:整合性を犠牲にするということ

BASE特性はメリットばかりではありません。

一時的とはいえ、データの不整合を許容するという性質は、
場合によっては深刻な問題を引き起こす可能性があります。

例えば、銀行の残高やECサイトの決済情報などです。

一瞬たりともデータの不整合が許されないシステムには、BASE特性は不向きです。

「どのデータがどれくらいの厳密さを必要とするか」を見極めることが、BASE特性を適切に利用する上でのカギとなります。

WebサービスやゲームにおけるBASE特性の活用例

BASE特性は、以下のような「多少の遅延や不整合が許容される」シーンで活躍しています。

  • SNSのタイムラインや投稿の「いいね!」数:いいねの数がリアルタイムで完璧に一致していなくても、ユーザー体験に大きな影響はありません。
  • Webサイトのアクセス数やPV数:瞬間的な数値のズレは許容されます。最終的に正確な数値が集計されていれば問題ありません。
  • オンラインゲームのランキング:リアルタイムで厳密な順位を争うものでなければ、数秒の遅延は許容範囲です。

このように、BASE特性は現代のWebサービスを支える重要な概念です。ご自身の担当するシステムで、どこまで厳密な整合性が必要かを考える際に、このBASE特性の考え方が役立つでしょう。

タイトルとURLをコピーしました